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【レポート】4/25-26 True Colors CIRCUS /SLOW CIRCUS PROJECT『T∞KY∞ ~虫のいい話~』

2021 05/14 Fri

4/25・26に行われる予定だったTrue Colors Festival参加プログラム、True Colors CIRCUS /SLOW CIRCUS PROJECT『T∞KY∞ ~虫のいい話~』。三回目の緊急事態宣言の発令により公演中止となってしまいましたが、24日にメディア内覧会、26日にYouTube配信に向けた撮影を行いました。

24日に行われたメディア内覧会の様子。この模様は6月1日よりYouTubeで動画配信される。

去年の5月に1回目の緊急事態宣言の発令による延期という選択を迫られたリベンジ公演の予定でしたが、またも緊急事態宣言に阻まれ、皆さんに生でお届けすることはかないませんでした。
しかし、事前にお知らせしていたように6月1日から2カ月間限定でYouTubeチャンネルにて公演の全編映像を公開します。
この機会にぜひ、チャンネル登録をお願いします!


 

T∞KY∞公演に向けて準備を進めているグローバルリングシアター。この会場いっぱいの予約をいただいていたが、お客様を入れることはかなわなかった。

上演会場は、スローサーカスプロジェクトの活動拠点である横浜から北へ約30㎞のところにある「池袋西口公園野外劇場 グローバルリングシアター」。
その都会のビル群の真ん中に、突如として出現した“T∞KY∞”という名の森。

森の中央には高さ6メートルほどのサーカストラス(通称トラス)と呼ばれる道具が鎮座しています。
このトラスは、空中ブランコやエアリアルと呼ばれるサーカスに欠かせない空中アクロバットのための道具のひとつで、スローサーカスプロジェクトでは2017年のスロームーブメントより登場しています。

会場装飾は、おとぎ舎さんのこだわりデザイン。小道具を置くテーブルも、本物の植木を使って目隠しを作っている。池袋の街に森の空間が広がった。

トラスからサーカスフラッグがツタのように四方に伸びていて、風が吹くとひらひらと翻り、まるで植物の息吹を感じるようです。
T∞KY∞の森にはトラスをぐるりと囲むように流木や草花が配置されています。この草花、葉物は生の植物で、おとぎ舎さんが毎日帰る前に、枯れないよう水の張ったバケツにつけて帰ってくれていました。

「シンプルな舞台空間に、パフォーマーと観客の皆さんの想像の力で、どこまでも広がる世界を描きたい」とプロデューサーの栗栖がオーダーしたこの舞台は、確かにとてもシンプル。でも、どこかに生き物が潜んでいそうな“隙間”がある、そんな雰囲気を感じる舞台です。

左・T∞KY∞の看板を掲げた入口ゲート。右・ゲートの横でおもてなしパフォーマーたちがメディアの方にジャグリングを披露している。

そんな雰囲気のある会場に入るゲートにはT∞KY∞のロゴ。
このロゴデザインは、チラシや衣装のデザインを担当する矢内原充志さんによるもの。
古代遺跡の壁画のような色づかいは、本公演が古い歴史書の中を舞台にしているような気を起こさせます。
そのゲートの横には、物販コーナー。
そして、本来であればご来場のお客様をお迎えするための「おもてなしパフォーマー」たちが立っています。彼らは3月に発売になったサーカスキットを使ってお出迎えのパフォーマンスをしてくれる予定でした。

次にご紹介したいのが「鑑賞サポート」。
今回の公演では、単なる解説などではなく、より作品理解を深めアクセシブルに楽しむための鑑賞サポートにチャレンジしました。

音声ガイドは、誰がどんなことをしているという単純な説明ではなく、本公演の一種の“ノベライズ”。益山貴司(劇団子供鉅人)さんに脚本をお願いして、ストーリーとしても楽しんでもらえる内容にしました。
益山さんには稽古風景から見てもらい、演出やシーンについて栗栖や金井さんと何度も話し合い、T∞KY∞の世界を文章へと創り変えてもらいました。
それだけではありません。脚本を読み上げたものを録音して流すのではなく、なんとパフォーマーの動きに合わせて、アナウンサーのお二人にその場でリアルタイムに読み上げてもらいました。

左・益山さんによって、脚本は本番当日まで修正が入れられていました。右・リアルタイムに台本を読み上げる二人。着ているのはT∞KY∞のオリジナルTシャツ。

そのアナウンサーの読み上げた「音」を瞬時に文字化するのが「字幕ガイド」。日本語、英語はもちろん、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語の6ヶ国語で展開されました。

他にも、作品中のセリフをパフォーマーが振付のように手話通訳する場面や、音を振動や光に変換するオンテナという機器の貸出も。オンテナは、聴覚障害のあるパフォーマーが作品中の出入りのきっかけをとったり、BGMでかかっている音楽を感知したりするためにも使用しています。

手首にオンテナをつけるKamiERI。彼女の補聴器でも聞き取りにくい音域の曲などの、入りや振り付けのキッカケを補助してくれていた。

鑑賞を「補う」ためだけの鑑賞サポートではなく、エンターテイメントとして「プラスワン」する私たちの鑑賞サポート。
今度、スローサーカスプロジェクトの公演にお越しの際には、ぜひお試しください。

少しずつ太陽が西へと傾き、池袋の街並みに色濃く影を落としていきます。
T∞KY∞の森の木々も次第に色濃くなっていき、黄昏時の雰囲気が漂い始めました。

そんな中、キャストたちによる開演前のパフォーマンスが始まります。
さまざまな虫の衣装に身を包んだキャストが、代わる代わるびよーんという効果音と共にトラスから吊るされた伸縮性のある紐でバンジーに挑戦。この効果音を操るのは、川瀬浩介さん。びよーんというバンジーの音だけではなく、本編のいたるところで、パフォーマーの動きを見ながら「ここぞ!」というタイミングを狙って音を入れてくれました。

キーボード型の音響卓にはテープで曲や効果音の名前が書かれている。この鍵盤を絶妙なタイミングで押し、曲や効果音を入れていた。

バンジーで遊んでいた虫たちがいなくなった後、電子音を鳴らしながら“DJ虫”が登場。その音に誘われるようにもう一匹の虫も踊りながら入ってきます。二匹はくるくると舞台上を飛び回ります。
そこに森の精霊虫がのっしのっしと歩いて入ってきます。

優に2メートルはあろうかという森の精霊虫を見て、メディアの方たちは一斉にその姿をカメラやスマホで納めます。
ちなみに、スローレーベルの公演ではお客さんも、フラッシュをたかなければ自由に写真や動画を撮ることができます。それらをSNSにアップすることも規制していません。6月からの動画配信の際にも、#tookyoo や #SLOWCIRCUSPROJECT のハッシュタグと一緒にスクリーンショットや画面録画をSNSにどんどん載せてくださいね。

二匹の虫と精霊虫たちが退場すると、ピッピッピという笛の音がして、6匹の虫たちが入ってきました。
虫たちは観客とリズムの掛け合いを楽しみます。
リズム隊のコミカルな様子に、メディアの方からも笑い声が漏れて、場の空気がほぐれてきました。

6匹の虫たちがお辞儀をして、拍手を受けながら退場すると、再度、森の精霊虫が入ってきました。いよいよ本番スタートです。
森の精霊虫が長い手を掲げてアーチを作ると、そこからいろんな個性を持った虫たちがカラフルな衣装に身を包み、続々と入ってきます。

長老虫の下で訓練をする虫たちの様子。後ろには巨人のような森の精霊虫がいる。カラフルな衣装デザインは矢内原充志さん、個性的なヘアメイクデザインは藤原一毅さん、顔にタトゥーのように施されたメイクデザインは石原桃子さん。すべて違うデザイナーたちによるものだが、不思議と統一感がある。

このカラフルな衣装は、栗栖が「未来のファッション」としてこだわって、衣装の矢内原充志さんにオーダーしたもの。

持続可能な社会づくりに相応しい表現の形として、古着を使って創ったこの衣装は、南米の文化の影響もうけています。
南米はソーシャルサーカスの先進地域。2019年にそのリサーチに訪れたとき、そのカラフルで生命力溢れる世界観にクリエイティブチームは圧倒されました。“プリミティブだけど人間のエネルギーに満ちた南米こそ、もしかしたら「未来」の社会の縮図では?”と思い、衣装・会場装飾・チラシなどすべてのデザインに南米の世界観を取り入れました。

そんな未来のファッションをまとった虫たちはどんな世界を見せてくれるのでしょうか。

多様な虫たちは、長老虫の下で互いに助け合って生きていく訓練を受けながら生きています。
そこへやってきたのは「トウキョウ座」ののぼりを掲げた旅芸人のトッチとかおり。
虫嫌いな二人は、虫たちに向かって虫よけスプレーを噴射したからたまりません!
虫たちは逃げて行ってしまいました。

虫がいなくなり、トッチとかおりはふたりで芸の稽古をしたりおにぎりを食べたりしていると、運び虫たちがやってきて、おにぎりや商売道具はおろか、かおりまで運んで行ってしまいます。
バラバラになってしまったトッチとかおりはお互いを探し虫の世界へと入っていき、たくさんの個性あふれる虫たちと出会います。

公演の様子。エアリアルの華麗なパフォーマンス、緊張感あふれるチャイニーズポールのアクロバットも見物だ。

物語のクライマックスは、大人の虫になるための成虫の儀式です。
ここでは、ソーシャルサーカスの代表的なプログラムでもある「イニシエーション」というアクロバットが出てきます。
高いところに立った人が、後ろにいる仲間が自分を必ず受け止めてくれると信じ、背面で倒れていきます。高い場所に立つこと、倒れる先を目で見れないこと、落下のリスク、人間の恐怖心をあおるには十分すぎるこのアクロバットは、仲間への信頼がなくては成立しません。

虫たちに励まされ、苦手な高い場所に登るかおり。果たして彼女はイニシエーションを成功させることができるのでしょうか。

虫たちは、旅芸人のかおりにも成虫の儀式を受けるように促します。

実は、キャストのかおり自身、高いところが苦手でスローサーカスプロジェクトの稽古場では「怖いからやりたくない」と言っていたアクロバットだったのです。
しかし、仲間がやっているのを見るうちに「怖い」より「面白そう」がむくむくを大きく育ってきて、自分から「やってみたい」と声を上げたという背景がこのシーンにはあります。

今回のT∞KY∞というこの作品はフィクションですが、私たちスローサーカスプロジェクトの稽古場でやっていることやキャストの関係性がそのまま舞台に載っているという点ではノンフィクションでもあります。

サーカスの技を習得する過程で築いた、ひとりひとりの成長とチームの絆が織り交ぜられた作品です。
もし、キャストがキラキラと輝いていると感じていただけたのならば、それは私たちが目指す「人と人との多様性と調和のある世界」への確実な一歩が、未来に向けて踏みしめられたということでしょう。

その一歩が踏み出せたのかどうか、虫たちの世界に迷い込んだ旅芸人の二人が一体どうなったのか、6月1日(火)から公開される公演の全編動画をぜひご覧ください。前半でご紹介した「音声ガイド」や「日英字幕」の鑑賞サポートもお楽しみいただけます。

キャストたちの笑顔がまぶしいラストの大団円。彼らがスローサーカスプロジェクトという居場所でのびのびと輝いているのだと思わせてくれる表情だ。

今回は、残念ながら中止という判断をせざるを得ませんでしたが、必ず皆様に生で見ていただけるよう準備を進めています。私たちのスローガンである「Be Slow」を胸に、ゆっくり、だけど一歩ずつ、着実に進んでまいりますので、再演の際はぜひ劇場へと足をお運びください
私たちが描く未来の景色を、きらきらと輝く表情のパフォーマーたちを通じて見ていただけると思います。

それでは、そのときまで「まったねー」!


オンラインショップでは、キャストやスタッフが着ていた公演オリジナルTシャツや、本公演のためにデザインされたテキスタイルを使用したオリジナルマスクも販売中です。
現在、Tシャツとマスクを一緒にご注文くださった方を対象に、True Colors CIRCUS /SLOW CIRCUS PROJECT『T∞KY∞ ~虫のいい話~』の当日パンフレットプレゼントキャンペーンも実施中! 6月1日のYouTube配信時にはマスク・オリジナルTシャツ・パンフレットをお手元に鑑賞をお楽しみください!


撮影:冨田了平/矢彦沢和音
提供:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS

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